能登島の可能性を次世代に伝えていく。能登デザイン室 田口千重さん

ヒト・くらし

能登デザイン室
田口 千重さん


石川県七尾市生まれ。大学進学後、イギリス留学を経て建築士の資格を取得。
七尾に戻り、能登島でカフェを始める。結婚後は能登デザイン室で建築とデザインを本業としながら、
能登島まあそいの活動にも携わっている。

スローフード運動との出会い



穏やかな海が眼前に広がる高台に、能登デザイン室は立っている。
石川の県木、アテを使って建てられた住居兼事務所でお話を伺った。
「生まれてから高校まではずっと七尾で過ごして、大学は横浜の学校にに進学しました。建築の勉強をしました。卒業してからは、イギリスに2年間留学して庭園設計を学びました。その後は七尾に戻ってきて、実家が建築業をしていたので、そこで働きながら建築士の資格を取りました。ちょうどその頃、まだ結婚していなかった主人がイタリアに住んでいたので、行ってみようかなとなりまして。2,3ヶ月ぐらいのつもりが、1年ぐらい滞在しました。そこで出会ったのが、スローフード運動でした。その土地の食文化を守るという考え方。その時に能登の食文化に代表される豊かさ、可能性に気づいて、また七尾に帰ってきました」

七尾に帰ってきてからは、能登島でカフェをオープン。
能登島を選んだことには、理由があった。
「スローフード運動の考え方を一番表現できそうな場所だったのが能登島でした。先祖のお墓があるので、毎年訪れていたことも関係するのかな。ただ、漠然とですけど、スローフード運動と能登島が、そのとき自分の中で繋がったんです」

“まあそい”は豊かさの象徴


現在は本業である建築とデザインの仕事をしながら、能登島の魅力を発信する活動に携わっている。『能登島まあそい』もその一つだ。webサイトで能登島の暮らしや日々の風景を発信し、実際に島を肌で感じることができるお泊りツアーなども企画している。
「”まあそい”には、豊かな、肥えているという意味があって、豊かさの象徴のような言葉です。能登島まあそいは、元々地域づくり協議会の方がされていた事業が始まりです。私も能登島で商品開発をしていたので、そこに参加した形になります。今やろうとしていることは、土産品という商品の開発と、能登島の色々な方々がされている体験イベントなどを繋いで、一つの滞在プランとして提案することです。ゆくゆくは旅行業みたいなこともしていきたいと考えています」

“ここだけにしかないもの”


そうやって、島の魅力を発信していく中で、「ここだけにしかないもの」を考えるそう。
「能登島って何でもあるんですよね。でも、これといったものや能登島にしかないもの、というのはなかなか見つけられない。でも、年配の方々の暮らしの知恵や、景色の中に海があって山があるっていう当たり前のことが、私はすごいと思います。要は、食べ物が景色の中に入っていて、それを日々食べて暮らしているということ。都会だと、自然の食べ物が景色の中にあるなんてことは、ほとんどないと思います。だから、そういうところは能登島の素晴らしいところなんですが、かといって能登島だけかっていうと、どこの地域も同じなので(笑)ここにしかないものって考えるのは難しいですよね」

手間をかける大切さ



島はお米中心の生活が基本。
米の天日干しや畑の手入れなど、島の暮らしには手間がかかる事が多い。
「手間っていうことに、時間をかけられないじゃないですか。それこそ買ったもののほうが安いとか。昔の人は儲けにならない作業とかも気にせずやっていたんだろうけど、今の時代はお金というものがまず先に考えられる時代なんです。だけど、ここの生活には、米のはざ干しや田んぼの管理とか、時間がかかって手間なんだけどお金じゃない部分、お金に変えられない価値がある。それが大事だと思います」

お金では得られない暮らしとは?


「夜ご飯のときに、貰い物だけで食卓を飾ることができることとかですかね。お金がかかっていないのに豪華な食事になったり、季節の野菜を食べることができたり。しかも人からもらうってことは、そこに人と人との繋がりがあるっていうこと。それは、本当にお金には変えられない価値の部分だなって思いますね」

島の子育て


最近、島には移住してくる人たちも徐々に増えてきている。
能登島のように、自然豊かな田舎で子育てをしたいと考えている人は多いはずだ。
千重さんも3人の子供を育てる母。現在進行形で、子どもたちに島の魅力を伝えている。
「島は子育てをするにはとても良い場所です。移住してきて子育てする人にも、ここは合ってると思います。だけど、受け身のままでいては何もない場所でしかないじゃないですか。なので、自然に触れることとかは日々できるし、その受け身ではない子育てのもう一歩先に行くためには、親なり地域なりの子育てへの仕掛けは必要だとは思います。なので、今は自分も子供がいるので、私が関わってきた能登島手まつりのイベントで、子供向けのクラフト育というのを考えたりしています。これは、子供の時からうつわにに触れたり、壊れたものを直す体験をするという狙いがあります。あと、昔から餅つきや味噌作りをやっているんですが、そこに地域の人たちや子どもたちを呼んで、季節ごとの行事として残していけたら、子どもたちにとっても島での財産になるかなと。そういう流れが島全体で起こってきたら、尚良しです」

仕事と子育て、一見すると両立は難しい。だけど…
「子供を育てながら仕事をしているので、なるべく一石二鳥にしたいなと思っているんですよ。仕事も子育て寄りにして、子供も私の仕事を見てなにかできたらいいなと。子供から見て、そこから何かを学べるような仕事の仕方ができたらいいですよね」

次世代に伝えていく必要性


昔からの暮らし方や文化。それらは、誰かに伝えていかないと残らない。
今は、次世代の人たちに継承していく時間でもある。
「私たちの親世代の人や昔から島で生活している人は、ここはなんにもないし、ここに帰ってきても仕事はないって絶対言うんですよ。それって、洗脳みたいですよね(笑)聞いていると、そう思い込んでしまうのは当たり前です。だけど、私もこの島に来て、新しい可能性を見つけて商売を始めたりしたし、それと同じように、子どもたちや新しく島に移住してくる人たちには能登島の可能性を感じてほしいです。感じてもらうために、私たちが島での暮らしや魅力を発信していきたい」

理想像は島のおばあちゃん


そんな千重さんには、将来の理想像がある。
「今のおばあちゃんたちは、ここでの暮らしを積み重ねてきたからこそ持ってる知識とか経験がある。そういう人たちみたいに、私も自分たちの子どもや孫に伝えていけたらなと思います」

能登デザイン室
〒926-0216 石川県七尾市能登島曲町10-132-1
TEL: 0767-84-1173
能登デザイン室HP:http://www.notodesign.jp/
フェイスブックページ:https://www.facebook.com/notodesign.jp/

能登島まあそいHP:https://masoi.net/
フェイスブックページ:https://www.facebook.com/masoi.net/

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