世界一周して、南アフリカで暮らし、七尾に移住。 農事組合法人なたうち 任田祥子さん

ヒト・くらし

農事組合法人なたうち
任田 祥子さん


東京都東村山市生まれ。O型。いまだに高校生に間違われる26歳。

「任田さんの奥さんは凄いらしい」


 今回の取材のきっかけは、七尾移住計画のメンバーでもある任田和真さんの一言だった。
「うちの奥さん、まじで面白いから取材した方がいいよ。わけわかんないから」
世界をピースボートで2周し、今は七尾市の高階地区で地域おこし協力隊として活躍する任田さん。常人には考えられない行動力を持つ彼をして、「わけがわからない」と言わしめる存在。これは取材しないわけにはいかないと思い、急いで本人にアポを取った。

地球1周して、南アフリカで暮らす。そんな大学生活


 簡単に任田祥子さんを紹介すると、東京生まれの東京育ち。両親と弟の4人家族。大学は「住んでみたかった」という理由で沖縄へ。大学2回生の終わり頃から休学し、ピースボートという世界一周ができるクルーズに飛び込み、世界を見て回った。その後、復学したかと思ったらまた休学。二度目の休学期間中は、一年間南アフリカで暮らしていたんだとか。
 大学卒業後は広島県の山の中にある観光農園に就職。そして今年1月、ピースボートを通じて出会った任田和真さんと結婚し、夫婦で七尾市高階地区に移住。
(詳細は任田夫妻のHPへ!(笑)→http://tohda.net/http://tohda.net/
これまでの経歴だけでも1つ2つ記事が書ける気はするが、今回はどうして七尾に来たか、どんな思考の持ち主なのか探ってみようと思う。

農業女子

 七尾市中島町釶打地区。七尾市内中心部から車で40分程走ると着く山間地の集落に祥子さんが勤務している「農事組合法人なたうち」がある。釶打の風景は、まさに日本の原風景そのもの。山合に田んぼが広がり、道のそばにはひまわり畑。こんなに夏が似合う場所もなかなかない。農事法人組合なたうちは、主に大豆や麦、野菜の栽培に取り組み、農産加工も行う。ここで祥子さんは毎日農業や事務作業をしている。
「暑い、寒い、重い。農業のイメージってこんな感じですけど、私はこの会社では数少ない女性なので、そういう重労働は結構男の人たちがやってくれます。(笑)農業やってみて良かったことは、作物を育てることの大変さがわかるし、運動にもなるし、野菜は美味しいし、色々ある。自分が自然体でいられることも凄く良いところ。けど、結局は自分が好きなものを自分で作って、自分で売ってみたいという気持ちが一番ですね」

どうして七尾へ?


 そんな彼女に一番聞いてみたかったことがある。東京からいきなり沖縄の大学へ進学し、ピースボートで世界一周も成し遂げ、ついには南アフリカで一年間暮らした人間が、どうして七尾に移住したのか?
返ってきた言葉はシンプルだった。
「直感。和真さんと結婚するときに決めた3年間のうちにやりたいこと、1.一緒に住む 2.田舎に住む 3.両親に孫を見せる。この3つが叶うならどこでもよかったんです。なんとなく和真さんの出身地である石川県に行く気はしてたけど、七尾に決めたのは本当に直感でした。高階地区の今住んでいる家を紹介されたときに、『あ、ここに住もう』って感じで」

移住するということ


 移住は今流行りのキーワードといっても過言ではない。人口が減り続けている日本の地方都市にとって、外からの移住者の呼び込みは不可欠なことであり、この七尾のように移住促進に力を入れている自治体も全国に多くある。現代では移住がそれほど珍しいものではなくなってきているとも言えるだろう。それでも簡単に移住できるかと言われると、都会に住む人にとっては難しいものに変わりはない。移住するということは生活や仕事、その他多くの環境を変えるという決断であり、その後の人生を左右するものだ。家族や知人といった人間関係にも配慮しなければならない。それ故に、ハードルの高い選択だと思っている人たちが多いと思われる。

移住=引っ越し


 だが、祥子さんは移住という選択も簡単なことだったと言う。
「移住って、自分の中ではどこへ行くのも移住なんですよね。引っ越し=移住みたいな。別に住む場所はどこでもいいし、移住に伴って捨てるものは無かったんです。すぐ動くことができた。移住はハードルが高いと思っている人は、それまでの周りの環境や人間関係を捨てなければいけないと思っているから、難しいんだと思います。逆に言うと、私はまだ何も持っていない人間だったし、それが良かったなとは思います」

「あ、この人いいな」


 これまでを振り返ってみると、祥子さんにとって“なんとなく”な自分の直感は最も信頼できる感覚だったそうだ。
「大学を決めるときも、選択肢は『どうせなら端っこがいいな』と思って北海道と沖縄への進学しか考えてなくて結局沖縄。南アフリカに行くときも、とりあえず行ってみたいと思った自分の気持ちに素直になっただけでした。実を言うと結婚も直感。和真さんと出会ったときに『あ、この人いいな』って感じて。ビビッと婚ですね。(笑) でも、今まで直感で後悔したことはないです。沖縄もアフリカも七尾も、直感で選んで全部いいとこでした。だからこれからも直感でいいなと思ってます」

わけがわからない祥子さん


 こうやって話を聞くと、夫である和真さんが「わけがわからない」と言った理由も理解できる気がする。多くの人間はリスクがあったり先が見えない選択をすることに対して、躊躇したり戸惑うだろう。また、周りをかえりみずに新しい場所に飛び込むことは、それなりの勇気が伴う行為だ。だが、祥子さんにはその躊躇や戸惑いなどは存在しない。自分の直感でいとも簡単に物事の決断を行い進んでいく姿は、たしかに他人からすると「わけがわからない」ことなのかもしれない。もはや、どこか「羨ましい」とも思ってしまう魅力さえある。自分にはできないことをいとも簡単にできてしまう、そんな人に憧れる気持ちが少しわかった。

たどり着いた七尾で

 実は今年の11月には待望の第一子が生まれるそうだ。
「子どもは絶対いたほうがいいし、何より七尾に来たのは子どもを田舎で育てたかったからです。子どもがいたら楽しいだろうし、子育てに不安はないかな。釶打なら農作業している間、自然で遊ばせることもできるだろうし(笑)」
そうやって話す祥子さんの顔は、なんとも言えない自身に満ち溢れていて、自分の決めた道をしっかりと歩んでいることがとても伝わってくる。単純に「どう生きるか」が問われる時代の中、直感に従い、決断してたどり着いた七尾で今日も農業をしている。その姿は本当に幸せそうだった。

農事組合法人なたうち
〒929-2204 石川県七尾市中島町上畠6部26番地
TEL: 0767-66-0867
能登釶打ふるさとづくり協議会HP:http://natauchi.com/
任田夫妻についてもっと知りたい方はこちら→http://tohda.net/

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