この豆に、この街に、こだわりあり。 中央茶廊 窪丈雄さん

お店



自家焙煎喫茶 中央茶廊
窪 丈雄さん


大学を卒業後、証券会社に勤務。
26歳で父が経営していたパチンコ店を引き継ぐ。
パチンコ店を閉めたあと、47歳で母が切り盛りしていた中央茶廊を受け継ぐ。
現在は街の活性化グループ、七尾まちあるきでも活動中。

受け継いだ母の店



父親はパチンコ屋を経営していて、父の死後にそのパチンコ店を継ぎました。
その後、2011年頃からコーヒーの勉強をしていて、5年前に中央茶廊を母から受け継ぎました。
この店は昭和35年から母がずっとやっていて、5年前からは自家焙煎で始めました。
理由はチェーン店の味に納得がいかなかったことと、勉強していくうちになぜ喫茶店が減っていったのかということへの自分の中の答えが見つかったから。自分の中でのチャレンジがこの店です。


喫茶店が減っていった理由の一つは、喫茶店の経営者がコーヒーの勉強をしなさすぎたから。どの業界でもそうですけど、勉強しない人は生き残れない。勉強しなくても繁盛している店はありますけど、それはまた別問題で。学ばない喫茶店は淘汰されるのは当然だと思う。
実はコンビニのコーヒーは年間14億杯飲まれていて、年々増えてるんですよ。でも、なんで100円のコーヒーより、400円、500円のコーヒーのほうが不味いのかって思うんですよ。
豆の勉強をしないとコンビニのコーヒーに味が負ける時代なんです。

豆へのこだわり



うちの豆は、豆の品種まで基本的にどこの農園主で誰が作ったのかわかります。
ブラジルのコーヒーって言っちゃえばそこまでなんですけどね。米はどこの米食ってるって言われても、コシヒカリとかヒノヒカリとかって言うでしょ?日本の米って言わないじゃないですか?コーヒー豆も米と同じで、色々な品種があるってことを知っておくべきです。
それから、豆を卸すときに気をつけることは色々ありますよ。その豆が追跡できるかできないか。商社が信用できるかできないか。変なものを掴まされるところもあるので、そこは注意してますね。あとは、自分で美味いと思うか思わないかも一つだし。
結局コーヒーは嗜好品なんです。極端に言うと、インスタントが美味いって言うとそれまでです。要は値段で飲むか味で飲むかはその人次第ですよね。
だから、自分が美味しいと思ったものを、お客さんに共感してもらうってことを大事にしています。美味しいと思うコーヒーについてお客さんと分かち合えたらいい。そういう場所でありたいです。

喫茶店で生まれるコミュニティ


一番最初に母からこの店を継ぐ話になったときに、継いでいきたいと思った部分があるんです。それは、親子3世代で通ってくれている人やうちの店でお見合いした人とかの話を聞くとわかってくるこの店の存在意義なんですよ。七尾から出て、また戻ってきた人がこの店懐かしいとかって言ってくれたり、この店で出会った人たちが仲良くなっていくのをみていると、コミュニティが生まれる場所でもあるんだなと思います。
元々カフェっていうのは、情報の交換場の役割があったんです。歴史上、コーヒーから経済が生まれているんですが、カフェはその経済の話をするような場だったようです。

七尾まちあるきができたきっかけとは?



元々言うと、御祓川を挟んで一本杉通り側とこっち側っていう意識がありました。一本杉のほうは頑張ってるから、川のこっち側でもなにかやろうっていうのが始まりです。
別に一本杉に対抗してってことじゃないんです。でも七尾の街は商店街同士が牽制しあっているから、ただでさえ力が分散してしまっている。バラバラの状態です。昔は船が港に来てて人の流れができてたから、ほっといても人が集まってくるような時代もあったんですけどね。
街を元気にするために一番大事な要素ってなんだと思いますか?ぼくは自分の店が元気であればいいと思っています。自分の店が元気だと人が集まってくる。元気な店が集まってくるとそれが商店街になってたんですよ。昔は。でも今は逆になってるんです。街や市、商店街がなんとかしてくれるって人が多いから、自分たちでなんとかしようという人がいない。
だから、商店街の枠を超えて、志が同じ人が集まることで街を元気にしたいと思って七尾まちあるきの活動を始めました。
誰かが事業をやるって言ったら、一緒になってやればいい。いがみ合っても輪島や珠洲の方にお客さんは行っちゃうから(笑)

色々やりました



つたやマートっていう集合店舗があったんですよ。今は駐車場になってるけど、昔は八百屋とか洋服屋とかおもちゃ屋とかが一つの建物に入ってて。そこで商売されてた方を呼んだりして、一日限りで復活させて七尾が賑やかだった時代を感じるイベントを仕掛けました。あと、月亭蜂起さんという七尾出身の落語家を呼んで落語会を開いたり、ビアガーデンをみんなでしたりしています。基本的にまちなかでできることをしていますね。今年はでか山のTシャツや飴を作りました。

「交流人口」より「常連人口」


僕たちの考え方の一つに、「常連人口」を作ろうというものがあります。1回来たら一見さん。、回来たら常連さんと言いますけど、この街に魅力があれば、お客さんに何回でも来てもらえる。交流人口が1人でも、3回来たら3人来たことと同じですよね。
石川は季節がはっきりしてるから、4つの季節それぞれの味わいがある。だから常連さんを増やして、1年に4回来てもらえれば常連人口は増えていくと思います。
そのためにこれからは、やる気がある有志で集まって連携を取って、誰かが始めたことにみんなで乗っかっていきたいです。市が動かないのであれば市を動かすぐらいの気概でやらないと。この街の人たちは誰かにぶら下がる傾向があるから、そこは変えていきたいです。

それと、イベントをやるにしても、前年行ったものをコピー・アンド・ペーストで今年もう一回同じことしても面白くないじゃないですか。だから、例えばディズニーランドのように、毎年感激できるような仕掛けをしてリピーターに繋げていかない。そのためには、面白くする努力が必要ですよね。
それとコーヒーの道も同じで、自分もコーヒーについて学んで、進化していかないといけないと思います。だから、これからも勉強し続けますよ。


おすすめのメニューは、お母さんが作るたまごサンド。
これから変わっていくものは多いだろう。
それでも昔懐かしい母の味だけは、変わらない。

  • 【終了】【東京】6月30日、地域の仕掛け人と直接話して地域のことを深く知れ...
  • 七尾で想いを繋げていく。雑貨とわらび餅の着物屋さん 夢華 ゆめはな 田中眞...

ピックアップ記事

関連記事一覧

ヒト・くらし

豊かな自然が広がる、南大呑(みなみおおのみ)

お店

旅の合間にゆっくり過ごしてほしい。能登島ゲストハウス葉波 福...